「温厚篤実(おんこうとくじつ)」という言葉を聞いたことがありますか?
一見むずかしそうに感じますが、じつは“人柄をほめるとき”によく使われる、とても温かい四字熟語なんです。
たとえば、いつも落ち着いていて、誰にでもやさしく接し、約束をしっかり守る人――。
そんな人をぴったり表すのが「温厚篤実」です。
この記事では、
- 「温厚篤実」の正しい意味と読み方
- 語源・由来や背景
- 使い方の例文
- 似た言葉(類義語)や反対の意味をもつ言葉(対義語)
- さらに英語での表現
まで、やさしく解説していきます。ぜひ最後まで読んでみてくださいね。

“温厚篤実”な人になりたいけど、テストの点数が戻ってきた瞬間に心が荒れるんだよな…。

まずは答案用紙に“穏やかな微笑み”を向ける練習からね。
「温厚篤実」の意味とは?わかりやすく解説
「温厚篤実」とは、おんこうとくじつと読み、心が温かく穏やかで、誠実な性格のこと。という意味があります。
温厚篤実の意味を辞書で調べると、このように解説されております。
【温厚篤実の意味】
四字熟語辞典より引用
- 心が温かく穏やかで、誠実な性格のこと。
「温厚」は穏やかで情に厚いこと。
「篤実」はまじめで思いやりがあること。
「篤実温厚」ともいう。
「温厚篤実(おんこうとくじつ)」の意味
「温厚篤実(おんこうとくじつ)」とは、
おだやかで思いやりがあり、誠実で信頼できる人柄を表す四字熟語です。
相手を尊重して接し、どんなときも落ち着いた態度で人に誠実に向き合う――。
そんな「優しさ」と「まじめさ」の両方を兼ね備えた人物を表現する言葉です。
つまり「温厚篤実な人」とは、
感情的にならず、人のために尽くすことができる心のあたたかい誠実な人のことを指します。
読み方と漢字それぞれの意味
漢字 | よみ | 意味 |
---|---|---|
温 | おん | あたたかく、おだやかであること |
厚 | こう | 思いやりや情けが深いこと |
篤 | とく | まじめで、誠実であること |
実 | じつ | 嘘やごまかしがなく、まごころがこもっていること |
この4つの文字を合わせて、「人情にあつく、誠実でまじめな性格」を意味するのが温厚篤実です。
豆知識
「温厚篤実」は、古くから人徳をほめる表現として使われてきた言葉で、
特に目立たずとも周囲から信頼されるような人を表すときにぴったりです。
派手さよりも中身のある“真のやさしさ”を評価する日本的な価値観を感じられます。

『温厚篤実』ってどんな人のこと?

そうね、たとえばクラスに一人はいるでしょ? いつも穏やかで、困っている人がいたらさりげなく助ける人。そんな人を“温厚篤実な人”っていうのよ
「温厚篤実」の語源や由来
温厚篤実の語源や由来は以下のとおりです。
【「温厚」と「篤実」から成る言葉】
「温厚篤実」は、二つの熟語――温厚と篤実――が合わさってできた四字熟語です。
- 温厚(おんこう) … 「性格が穏やかで、思いやりがあること」
- 篤実(とくじつ) … 「誠実でまじめ、うそ偽りがないこと」
この2つを組み合わせることで、
「心のあたたかさ(温厚)」と「誠実さ(篤実)」という、
人間として最も信頼される性質をあらわす言葉になりました。
語源の背景にある日本的価値観
「温厚篤実」は、古代中国の儒教思想にも通じる言葉です。
儒教では、「仁(じん)」=思いやり、「誠(せい)」=まごころ、を大切にしました。
この二つを併せ持つ人を「徳(とく)の高い人」として尊敬していたのです。
つまり「温厚篤実」は、
そうした道徳的で誠実な人格を讃える言葉として日本にも伝わり、
やがて「人柄の理想像」を表す表現として定着しました。
近世以降の用例
江戸時代の文人や明治期の教育書にも「温厚篤実」という語は多く登場します。
特に武士や学者など、人格を重んじる人々の間では、
「温厚篤実の人こそ信頼できる」とされ、
「立派な人物」「師としてふさわしい人」を表す褒め言葉として使われました。
「温厚篤実」の使い方を例文でわかりやすく解説
それでは、「温厚篤実」の正しい使い方を具体的にイメージできるようわかりやすい例文をご紹介します。

温厚篤実ってどういう場面で使ったりするの?

人の性格をほめるときに使うのよ。たとえば“穏やかで誠実な先生”や“思いやりのある友達”を紹介するときにぴったりね。

以下のような場面で使うと自然です。
- 性格や人柄を褒めるとき
例:「彼は温厚篤実な性格で、みんなから信頼されている。」 - 学校の作文や推薦文などで人物を紹介するとき
例:「先生は温厚篤実な方で、生徒一人ひとりに丁寧に接してくれる。」 - 会社や職場で上司・同僚を評価するとき
例:「温厚篤実な上司のもとで、安心して働ける。」 - 自己紹介や面接で人柄を表現したいとき
例:「私は温厚篤実な性格で、どんな仕事にも誠実に取り組みます。」 - 文章やスピーチで相手への敬意を示したいとき
例:「彼の温厚篤実なお人柄に、心から敬意を抱いています。」
- 自分をほめるときには使いすぎない
→「私は温厚篤実です」と言うと、少し自己主張が強く聞こえます。
他人が評価するときに使うのが自然です。 - 行動の裏付けがあるときに使う
→ ただ「優しい」ではなく、誠実な態度・落ち着いた言動を伴う人物に使います。 - 軽い場面(冗談・SNSなど)ではやや堅い印象になる
→ 会話や日常では「穏やかでまじめな人」と言いかえるのもOK。
温厚篤実の例文①(日常会話での使い方)
クラスでトラブルが起きたとき、冷静に仲裁した友達をほめる場面です。
性格を褒める自然な会話の中で使います。

この前、クラスで意見がぶつかったとき、田中くんがすごく落ち着いて話をまとめてくれたんだ。

彼は本当に温厚篤実よね。どんなときも冷静で、人の話をちゃんと聞いてくれるもの。

“温厚篤実”っていうのはまさにそういう人。感情的にならずに、誠実に人と向き合えるっていう意味なの。
「温厚篤実」は落ち着きと誠実さを兼ね備えた人物をほめる表現です。
感情をおさえて正しく行動できることがポイントで、友人や同僚の人柄を紹介するときにぴったりの言葉です。
温厚篤実の例文②(作文・推薦文での使い方)
学校の作文や推薦文で、先生や友人の人柄を説明する文の中で使う例です。

作文で“尊敬する人”について書くんだけど、担任の先生の性格をうまく表したいんだ。

“温厚篤実な先生”って書くのがぴったりじゃない?いつも穏やかで、生徒の話を親身に聞いてくれるもの。

“温厚篤実”は、ただ優しいだけじゃなくて、“誠実さ”や“信頼できる”という意味も含んでいるの。作文やスピーチで使うと、とても品のある表現になるわ。
「温厚篤実」が尊敬や感謝の気持ちをこめて人物を紹介する表現として使われています。
作文や推薦文で使うと、語彙力の高さや丁寧さを印象づけることができます。
特に、教師・先輩・上司など“人徳を持つ人”をたたえるときに最適です。
温厚篤実の例文③(ビジネス・フォーマルな場面)
職場や取引先など、あらたまった文書・挨拶文・スピーチなどで使うケースです。

会社の送別会でスピーチを頼まれたんだけど、上司の人柄をどう表せばいいかな?

“○○部長は温厚篤実なお人柄で、いつも部下を思いやってくださいました”って言うと、とても丁寧でいいわよ。

“温厚篤実”はフォーマルな場でも好印象の言葉。誠実さと穏やかさの両方を伝えられるから、上司を褒めるときにぴったりなの。
「温厚篤実」は信頼と尊敬を込めた表現として使えます。
スピーチや挨拶文、メールなどで“お世話になった上司”や“取引先の方”に使うと、相手への敬意が伝わります。
ただし、あまり多用すると形式的に感じられるため、文全体のバランスを見て使うのがポイントです。
「温厚篤実」の言い換え表現を例文を使ってわかりやすく解説
「温厚篤実」はとても上品で格式のある言葉ですが、日常会話では少し堅く感じられることがあります。
そんなときは、次のような言葉に言い換えると自然です。
【温厚篤実の言い換え表現】
言い換え語①:「穏やかで誠実な人」
言い換え語②:「思いやりがあってまじめな人」
「穏やかで誠実な人」の例文
穏やかで誠実な人」は、温厚篤実の意味をそのままやさしく表した表現です。
「穏やか」は感情を乱さず落ち着いた性格を、「誠実」は嘘をつかず真面目な性格を意味します。
二つを組み合わせることで、“誰からも信頼される性格”をあらわすことができます。

うちのクラスの川口さんって、怒ったところ見たことないね。

ほんとね。穏やかで誠実な人だと思う。誰にでも優しくて、約束もちゃんと守るし。「

“温厚篤実”をそのままやさしく言うなら、“穏やかで誠実な人”がぴったりね。落ち着きと真面目さの両方を伝えられる言葉よ。
「思いやりがあってまじめな人」の例文
「思いやりがあってまじめな人」は、温厚篤実の“やさしさ”を中心にした言い換えです。
人の気持ちを大切にし、コツコツと努力できる性格を表します。
こちらはより日常的で親しみやすい表現です。

バイトの先輩、仕事きびしいけど、いつも気にかけてくれるんだよね。

いい先輩ね。思いやりがあってまじめな人って感じ。

“温厚篤実”は少しかたく感じるけど、“思いやりがあってまじめな人”ならどんな場面でも使いやすいわ。誠実さよりも“やさしさ”を中心に伝えたいときにぴったりね。
「温厚篤実」の類義語
「温厚篤実」には、似た意味を持つ四字熟語がいくつかあります。ここではその中でも特に意味が近い以下の2つの言葉を紹介します。
【温厚篤実の類義語】
- 温柔敦厚(おんじゅうとんこう):おだやかで優しく、まじめで思いやりがある人柄
- 温良篤厚(おんりょうとっこう):おだやかで親切、まじめで誠実な性格
「温柔敦厚」の例文
「温柔敦厚」とは、おだやかで優しく、まじめで思いやりがある人柄を表す四字熟語です。
「温柔」は「穏やかでやさしい」という意味、
「敦厚」は「誠実で心があたたかい」という意味があります。
つまり「温厚篤実」と同じように、やさしさ+誠実さをあわせ持った人をほめる言葉です。
違いは、「温柔敦厚」は少し文学的で柔らかい印象を与える点です。
「人柄のやさしさ」を中心に伝えたいときに使われます。

杉山先生って、いつも落ち着いてて、話し方もやさしいよね。

ほんとに“温柔敦厚”な先生だと思うわ。どんな生徒にも丁寧に接してくれるし。

“温厚篤実”が“誠実で落ち着いた人”を表すのに対して、“温柔敦厚”は“やさしくて包みこむような人”というイメージね。人柄のやわらかさを強調したいときに使うとぴったりよ。
この例では、「温柔敦厚」が性格のやさしさや柔らかさを中心に伝える言葉として使われています。
「温厚篤実」よりも少し情感的で、心のぬくもりを感じさせる表現です。
特に、先生・年上の人・おだやかな人をたたえる場面にふさわしい言葉です。
「温良篤厚」の例文
「温良篤厚」とは、おだやかで親切、まじめで誠実な性格を意味する四字熟語です。
「温良」は「やさしくおだやか」、「篤厚」は「まじめで誠実」という意味で、
まさに「温厚篤実」とほぼ同じニュアンスを持ちます。
ただし、「温良篤厚」はよりまじめさ・誠実さを重視した言葉で、「思いやり」よりも「信頼できる」「道徳的」という印象が強いです。

僕職場の先輩、いつも遅くまで残って後輩の相談に乗ってくれるんだ。

それは“温良篤厚”な人ね。やさしいだけじゃなくて、責任感があって誠実なんだと思うわ。

“温厚篤実”よりも、もう少し“まじめさ”や“努力家”という印象を強めたいときに“温良篤厚”を使うといいの。信頼や尊敬を伝える言葉ね。
この例文では、「温良篤厚」が努力家で信頼できる性格を指しています。
「温厚篤実」は性格全体のバランスをほめる言葉ですが、
「温良篤厚」は「誠実に人と向き合い、努力を惜しまない姿勢」に焦点を当てる言葉です。
上司・先輩・先生などを紹介する場面で使うと、とても丁寧な印象を与えます。
「温厚篤実」の対義語
「温厚篤実」には、反対の意味を持つ言葉があります。
「穏やかで誠実な人」と正反対の性格を表す言葉として、ここでは次の2つを紹介します。
【温厚篤実の対義語】
① 傲慢不遜(ごうまんふそん):えらそうにふるまい、人を見下すような態度をとること。
② 厚顔無恥(こうがんむち):恥ずかしいことをしても平気な顔をしている態度。
「傲慢不遜」の例文
「傲慢不遜」とは、えらそうにふるまい、人を見下すような態度をとることを意味します。
- 「傲慢」は「自分が一番だと思い、他人を軽く見ること」
- 「不遜」は「けんそん(謙遜)がなく、礼儀を欠くこと」
つまり、「傲慢不遜な人」とは、人を見下したり、思いやりのない態度をとる人を表す言葉です。
「温厚篤実」が“誠実で思いやりのある人”をほめるのに対し、「傲慢不遜」は“尊大で冷たい態度”を批判する言葉になります。

あのドラマの社長、部下に命令ばっかりしてて、ちょっと怖いよね。

ええ、まさに“傲慢不遜”って感じね。人の話を聞かないで、自分の考えだけ押しつけてるわ。

“温厚篤実”が“穏やかで誠実”なら、“傲慢不遜”はその反対。“優しさがなく、思いやりよりも自分を優先する態度”をあらわす言葉なの。
「厚顔無恥」の例文
「厚顔無恥」とは、恥ずかしいことをしても平気な顔をしている態度を意味します。
- 「厚顔」は「顔の皮が厚い(=図々しい)」
- 「無恥」は「恥を知らない」
つまり、「厚顔無恥な人」とは、常識やマナーを気にせず、自分勝手な行動をする人のことです。
「温厚篤実」が“誠実で礼儀正しい人”を指すのに対して、「厚顔無恥」は“礼儀や思いやりを欠く人”という真逆の意味になります。

この前、順番を抜かしても謝らない人がいて、ちょっとびっくりしたよ。

そういうのを“厚顔無恥”って言うのよ。自分のことしか考えてない人ね。

“温厚篤実”な人は周りを思いやるけど、“厚顔無恥”な人は他人の気持ちに気づかないの。言葉の意味を対比すると、人間性の違いがよくわかるね。
「温厚篤実」の英語表現
「温厚篤実」は、日本語で「おだやかで誠実な人柄」を表す美しい言葉です。
英語では、まったく同じ言葉はありませんが、近い意味を持つ表現があります。
ここでは、2つの代表的な言い換えを紹介します。
【温厚篤実の英語】
① gentle and sincere(穏やかで誠実な)
② kind-hearted and honest(思いやりがあって正直な)
どちらも、人柄をほめるときに使える温かい言葉です。それぞれの意味と使い方を、例文といっしょに見ていきましょう。
「 gentle and sincere」の例文
「gentle」は「穏やかでやさしい」、「sincere」は「誠実でうそをつかない」という意味です。
この2つを組み合わせた「gentle and sincere」は、まさに「温厚篤実」と同じように、
おだやかで誠実な人柄を表す表現になります。

「温厚篤実」を英語で表現した例文を教えて!

"Everyone trusts Mr. Tanaka because he is gentle and sincere."のように表現することができます。
日本語訳:田中さんは穏やかで誠実な人なので、みんなから信頼されています。

この文では、「gentle and sincere」が性格をほめる形容表現として使われています。
“trusts”という動詞(信頼する)と組み合わせることで、
「穏やかで誠実な性格が信頼を生む」という流れが自然に伝わります。
「kind-hearted and honest」の例文
「kind-hearted」は「思いやりのある心を持った」、「honest」は「正直で誠実な」という意味です。
この2つを合わせた「kind-hearted and honest」は、
人の気持ちを大切にし、うそをつかずまじめに行動する人を表す言葉です。
つまり、「温厚篤実」を少しやさしさ中心に言い換えた英語表現です。

「温厚篤実」を英語で表現した例文をもう1つ教えて!

"She is kind-hearted and honest, always helping others without expecting anything in return."のように表現することができます。
日本語訳:彼女は思いやりがあって正直な人で、見返りを求めずにいつも人を助けています。

この英文では、「kind-hearted and honest」が人物の性格を表す中心的な表現です。“helping others without expecting anything in return(見返りを求めずに人を助ける)”という部分が、まさに「温厚篤実」らしい行動を描いています。
まとめ:「温厚篤実」は誠実さをあらわす最高の褒め言葉
「温厚篤実(おんこうとくじつ)」とは、
穏やかで誠実、そして思いやりのある人を指す四字熟語です。
この言葉は、外見や派手さではなく、
人としての「内面の美しさ」や「誠実な行動」を評価する日本的な価値観を表しています。
現代でも、「温厚篤実な人」はどんな社会でも信頼され、
人間関係を円滑にし、周囲に安心感を与える存在です。
SNSや仕事、学校生活の中で、冷静で思いやりをもって行動すること――
それこそが、この言葉の生きた形です。
“やさしさと誠実さは、時代をこえて人の心を動かす”
「温厚篤実」はまさに、そんな普遍的な人間の理想を表す言葉です。
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