「悪いことをすると、すぐに人に知られてしまう」と言われることがあります。まさにその状況を表すのが、四字熟語「悪事千里(あくじせんり)」です。
この言葉には、「良い噂はなかなか広まらないのに、悪い噂ほど一瞬で広まる」という人間社会の皮肉が込められています。
本記事では、「悪事千里」の意味や語源、日常での使い方を例文とともに丁寧に解説します。さらに、類義語や対義語、英語表現なども紹介し、言葉の背景にある教訓まで掘り下げます。
読んだあとには、「なぜ悪い行いは目立ってしまうのか」がきっとよくわかるはずです。
ヒロト悪事千里って言うけど、僕の失敗も千里先まで広まってる気がするんだよね…。
コトハヒロトの場合は、千里どころか職場の隣の席からもうバレてるわよ。
「悪事千里」の意味とは?わかりやすく解説
「悪事千里」とは、あくじせんりと読み、悪い噂や悪い評判はすぐに遠くまで知れ渡るということ。という意味があります。
悪事千里の意味を辞書で調べると、このように解説されております。
【悪事千里の意味】
四字熟語辞典より引用
- 悪い噂や悪い評判はすぐに遠くまで知れ渡るということ。
「悪事」は悪い行い、「千里」は遠くの場所という意味。
悪事千里(あくじせんり)とは、「悪い行いはすぐに世間に広まり、隠し通すことはできない」
という意味の四字熟語です。
つまり、人が悪いことをすれば、その噂や評判はあっという間に広がってしまう――という戒めや教訓を含んだ言葉です。
ここでいう「千里(せんり)」とは、「とても遠くまで」という意味を持ち、距離ではなく広がりの速さ・範囲の大きさを表しています。
ヒロト「悪事千里」ってどんなことを意味するの?もう少し詳しく教えて!
コトハ「悪事千里」は、悪いことをすると、その噂や評判があっという間に広まってしまうという意味よ。どんなに隠しても、悪い行いは必ず人に知られてしまうという教えなの。
例文的な意味解釈
- よくない行為や発言は、あっという間に周囲に知られてしまう。
- 一度信頼を失えば、取り戻すのは難しい。
- 「隠しごとはできない」という教えにもつながる。
たとえば、職場やSNSなどでの不正や失言も、「悪事千里」の典型的な例といえます。
現代では、「情報の拡散」や「炎上」といった現象にも通じる言葉です。
補足:対になる考え
この言葉には、「善事は広まりにくい」という意味も暗に含まれています。
「良いことはなかなか伝わらないのに、悪いことほど早く伝わる」という、
人間社会の不公平さや現実の鋭い洞察を示す言葉でもあります。
「悪事千里」の語源や由来
「悪事千里」という四字熟語は、中国の古典『史記(しき)』に由来しています。
この書の中に登場する言葉「悪事行千里(あくじせんりにゆく)」が元になったといわれています。
当時、「千里」は“遠くまで”という意味を表す比喩であり、
「悪い行いはたちまち遠くまで広がってしまう」という人のうわさの速さを示していました。
もともと「善事は広まらず、悪事は千里を行く」とも言われ、
人々の記憶に残りやすいのは良い行いよりも悪い行いだ、という人間社会の真理を伝える表現なのです。
この考え方は、古くから日本にも伝わり、江戸時代以降はことわざとしても広まりました。
今日では、「悪事千里を走る」「悪事千里に伝わる」などと変化した形で使われることもあります。
「悪事千里」の使い方を例文でわかりやすく解説
「悪事千里」は、悪い行い・不正・うわさの広まりなどに関する話題で使われる言葉です。
日常会話やニュース、ビジネスシーンでも使える四字熟語ですが、使い方には少し注意が必要です。
ヒロト悪事千里ってどういう場面で使ったりするの?
コトハ「悪事千里」は、人の悪い行いや噂がすぐに広まるような場面で使うの。たとえば、不正が発覚したときや、陰口・失言が一気に知られてしまったときなどによく使われる言葉よ。

- 不正や隠しごとが明るみに出たとき
例:会社の不正が公になったニュースに対して使う。 - 人のうわさや悪評が広まるとき
例:SNSで悪口やデマが拡散する状況。 - 失言やトラブルが注目されたとき
例:有名人の不用意な発言が世間に広まるケース。 - 「隠しても無駄」という教訓を伝えるとき
例:子どもに「悪いことはすぐバレる」と諭す場面。 - 人の信用や評判を話題にするとき
例:「信頼は積み上げるのに時間がかかるが、失うのは一瞬」という文脈で使う。
- 冗談や皮肉で使うと誤解を招くことがある。
→ 道徳的な意味を含むため、軽い場面では避けるのが無難。 - 自分や身近な人に向けて使う場合は、柔らかい言い方にする。
→ 「悪事千里だね」などと直接言うと、非難に聞こえることも。 - ビジネス文書では“比喩表現”として使うのが望ましい。
→ たとえば「信頼失墜は悪事千里となり得ます」といった使い方。
「悪事千里」の例文①
会社の不正が公になった場面
ヒロト社内の不正がすぐにニュースになっちゃったね。
コトハまさに悪事千里ね。どんなに隠しても悪いことは広まるものよ。
ヒカル「悪事千里」が不正や悪行があっという間に世間に広がる様子を表しています。組織内の不祥事やニュース報道に関してよく使われる使い方です。
「悪事千里」の例文②
SNSでの発言が炎上した場面
ヒロトSNSでの軽い冗談が炎上して大変なことになったよ…。
コトハネット社会では悪事千里どころか、悪事一瞬だね。
ヒカル現代風のユーモアを交えた使い方です。「悪い言動が一瞬で拡散する」という意味で、SNSやインターネット上の情報拡散を皮肉っぽく表しています。
「悪事千里」の例文③
職場の陰口が広まった場面
ヒロトあの人、裏で同僚の悪口を言ってたらしいよ。
コトハ悪事千里っていうけど、本当にそうだね。すぐに耳に入ってくるもん。
ヒカルここでは、悪口や陰口がすぐに広まるという日常的な使い方です。人間関係のトラブルや職場での噂話にも自然に使える表現です。
「悪事千里」の言い換え表現を例文を使ってわかりやすく解説
「悪事千里」は少し硬い四字熟語ですが、日常会話ではもう少し柔らかい表現で言い換えることもできます。
ここでは、意味が近い日常的な言葉を2つ紹介します。
【悪事千里の言い換え表現】
①悪いことはすぐバレる
②悪い噂は広まるのが早い
「悪いことはすぐバレる」の例文
「悪いことはすぐバレる」は、「悪事千里」とほぼ同じ意味で使える、もっと口語的な言い回しです。
「どんなに隠しても、悪いことをすれば必ず知られてしまう」という教訓的な意味を持っています。
子どもや部下への注意など、親しみやすいシーンで使われる表現です。
ヒロト昨日、こっそり仕事サボったのバレちゃった…。
コトハだから言ったでしょ。悪いことはすぐバレるって。
ヒカルこの表現は、「悪事千里」のカジュアルな言い換え。隠しても必ず露見するという意味を、やさしく伝えるときに使われます。
「悪い噂は広まるのが早い」の例文
「悪い噂は広まるのが早い」は、「噂」や「情報の拡散」に焦点を当てた言い換えです。
「悪事千里」が持つ“悪い行いがすぐ知れ渡る”というニュアンスを、現代的にわかりやすく表した言葉です。
SNSや人間関係の話題にも自然に使えます。
ヒロト昨日のちょっとした発言が、もうみんなに知られてたよ!
コトハ悪い噂は広まるのが早いって言うけど、本当にそうね。
ヒカルこの表現は、「悪事千里」と同じく悪い評判の拡散の速さを表しています。
ビジネス・学校・SNSなど、さまざまな場面で使いやすい柔らかい表現です。
「悪事千里」の類義語
「悪事千里」と近い意味を持つ四字熟語には、
“悪い行いは必ず自分に返ってくる”という教訓を含むものが多くあります。
ここでは代表的な2つの類義語を紹介します。
【悪事千里の類義語】
①因果応報(いんがおうほう):自分の行い(因)が原因となり、その結果(果)が必ず自分に返ってくるという仏教の教え。
②天網恢恢(てんもうかいかい):天の網は広くて目が粗いようでも、悪人は必ず捕らえられるということ。
「因果応報」の例文
「因果応報」とは、自分の行い(因)が原因となり、その結果(果)が必ず自分に返ってくるという仏教の教えです。
良いことをすれば良い報いがあり、悪いことをすれば悪い報いがある――
まさに「悪事千里」と同じく、悪行を戒める言葉です。
ヒロト上司の不正が結局バレて左遷されたらしいよ。
コトハそれは因果応報ね。悪い行いは、いつか必ず自分に返ってくるのよ。
ヒカルこの例では、「因果応報」が悪事に対する報いを表しています。
「悪事千里」が“広まりの速さ”を示すのに対し、「因果応報」は“結果として報いを受ける”点に重点があります。
「天網恢恢」の例文
天網恢恢(てんもうかいかい)とは、
天の網は広くて目が粗いようでも、悪人は必ず捕らえられるという意味の四字熟語です。
出典は中国の『老子』で、「天網恢恢、疎にして漏らさず(天の網は広くゆるやかだが、悪は逃れられない)」という一節に由来します。
ヒロト不正をしてもバレないと思ってる人って多いよね。
コトハでも天網恢恢。悪事は必ず明るみに出るものよ。
ヒカルここでは、「天網恢恢」が正義や天の裁きの不可避性を表しています。
「悪事千里」と同じく“悪い行いは逃れられない”という教訓的な意味で使われます。
「悪事千里」の対義語
「悪事千里」に明確な対義語は存在しませんが、
反対の意味をもつ言葉として「善い行いは報われる」「善は静かに広がる」という考えを表す四字熟語があります。
ここでは、その代表的な2つを紹介します。
【悪事千里と反対の意味をもつ言葉】
①積善余慶(せきぜんのよけい):善い行いを何度も行った家は、子孫にもその恩恵があるということ。
②陰徳陽報(いんとくようほう):人知れず行った善い行い(陰徳)は、やがて明るい形(陽報)で報われるということ。
「積善余慶」の例文
「積善余慶」とは、善い行いを積み重ねれば、その幸福や恩恵が子孫や周囲にも及ぶという意味の四字熟語です。
出典は『易経(えききょう)』で、「積善の家には必ず余慶あり」と記されています。
つまり、悪事がすぐ広まる「悪事千里」とは対照的に、善行は静かに幸運を生み出すという考えを示す言葉です。
ヒロトあの人、いつもさりげなく人を助けてるよね。
コトハ積善余慶って言葉があるけど、ああいう人のもとにはきっと良いことが返ってくるのよ。
ヒカルここでは、「積善余慶」が善い行いが長い時間をかけて幸福をもたらすという意味で使われています。
「悪事千里」が“悪の拡散”なら、「積善余慶」は“善の積み重ね”です。
「陰徳陽報」の例文
「陰徳陽報」とは、人知れず行った善い行い(陰徳)は、やがて明るい形(陽報)で報われるという意味の四字熟語です。
出典は中国の古典『太上感応篇(たいじょうかんのうへん)』。
“善い行いはすぐに知られなくても、やがて良い結果となって現れる”という前向きな教えを表しています。
ヒロト誰にも言わずに寄付してる人って、ほんとすごいと思う。
コトハそうね。陰徳陽報というように、見えない善はきっと明るい形で報われるのよ。
ヒカル「陰徳陽報」は、「悪事千里」と反対に善い行いの静かな力を伝える言葉です。
悪がすぐ広まるように見えても、善には善の時間の流れがある――そんな優しい教訓を含んでいます。
「悪事千里」の英語表現
「悪事千里」に完全に対応する英語の四字熟語は存在しませんが、
英語にはこれと同じ考えを表すことわざ(proverb)や表現があります。
主に次の3つが近い意味を持ちます。
代表的な英語表現
| 英語表現 | 意味 | ニュアンス |
|---|---|---|
| Bad news travels fast. | 悪い知らせはすぐに広まる。 | 最も「悪事千里」に近い英語表現。 |
| Ill news spreads quickly. | 悪い噂はすぐに広まる。 | 少し文学的で古風な言い方。 |
| What goes around comes around. | 自分の行いは自分に返ってくる。 | 「因果応報」にも近い。 |
「bad news travels fast.」の例文
ヒロト『悪事千里』って英語でどう言えばいいの?
コトハ“Bad news travels fast.” って言うのよ。悪い知らせや噂は、あっという間に広まるって意味なの。
例文:Bad news travels fast, so be careful what you say online.
(悪い噂はすぐに広まるから、ネットでの発言には気をつけてね。)
ヒカルこの “Bad news travels fast.” は、「悪事千里」と最も近い意味を持つ英語のことわざです。
“bad news” は悪い知らせや悪評、“travels fast” は「速く伝わる」という意味。
SNSなど現代社会にもぴったり当てはまる表現です。
「ill news spreads quickly.」の例文
ヒロトほかにも似たような英語表現ってあるの?
コトハ“Ill news spreads quickly.” も同じ意味で使えるわ。少し古風で上品な響きね。
例文:Ill news spreads quickly in a small town.
(小さな町では悪い噂はすぐに広まる。)
ヒカルこの表現は“Bad news travels fast.”よりも文学的で格調の高い言い回しです。
“ill news” は「悪い知らせ」という意味で、特に書き言葉でよく使われます。
「What goes around comes around.」の例文
ヒロト“悪いことをすればいつか返ってくる”って感じの英語はある?
コトハそれなら “What goes around comes around.” がぴったりよ。
例文:He cheated his friends, but what goes around comes around.
(彼は友人をだましたけど、自分の行いは必ず自分に返ってくるものよ。)
ヒカル“What goes around comes around.” は、「因果応報」や「悪事千里」の考えに通じる表現です。
直訳すると「巡り巡って自分に返ってくる」という意味で、悪い行いの結果を強調した言葉です。
まとめ:「悪事千里」から学べる教訓
悪事千里(あくじせんり)とは、
悪い行いはすぐに人に知られてしまうという戒めの言葉です。
古くは『史記』に由来し、「悪事は千里を行く」として、
悪い評判があっという間に広まる人間社会の現実を鋭く描いています。
一方で、「積善余慶」や「陰徳陽報」のように、
善い行いは静かに幸福を生み、やがて報われるという教えもあります。
悪が目立つ世の中でも、誠実で思いやりのある行動を続けることが、
本当の意味での“良い評判”を育てる第一歩なのです。
ポイント
- 「悪事千里」=悪い行いはすぐに広まり、隠せないという教訓。
- 類義語:「因果応報」「天網恢恢」/対義的な言葉:「積善余慶」「陰徳陽報」。
- 英語では “Bad news travels fast.” が最も近い表現。
- 現代ではSNSや職場でも、“悪い噂はすぐ拡散する”という意味でよく使われる。
- 誠実な行動は時間をかけて信頼を築く――善は静かに実を結ぶ。
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