日常生活でも「話が有耶無耶になってしまった」「うやむやに終わった」という表現を耳にすることがありますよね。
けれど、「有耶無耶」という四字熟語の本来の意味や使い方を、正確に説明できる人は意外と少ないかもしれません。
「有耶無耶」は、物事をはっきりさせずにあいまいなままにすることを表す言葉です。
何かをうやむやにして済ませる――そんな場面にぴったりの表現といえます。
この記事では、
- 「有耶無耶」の正しい意味と語源
- 日常での使い方とわかりやすい例文
- 類義語・対義語・英語表現まで
を、やさしい言葉で丁寧に解説します。
この記事を読めば、「有耶無耶」という言葉を正確に理解して自然に使えるようになります。
ヒロト昨日の告白、なんか返事が有耶無耶だったんだよなぁ……。
コトハそれ、優しさで包まれた“やんわりお断り”かもね。
「有耶無耶」の意味とは?わかりやすく解説
「有耶無耶」とは、「うやむや」と読み、あるのかないのかよくわからないほど曖昧な様子。
という意味があります。
有耶無耶の意味を辞書で調べると、このように解説されております。
【有耶無耶の意味】
四字熟語辞典より引用
- あるのかないのかよくわからないほど曖昧な様子。
「有りや無しや」という言葉を漢文調に有耶無耶と書いて、それを音読したという説が有力な語源である。
言葉の読み方と基本的な意味
有耶無耶(うやむや)とは、
物事のはっきりしないさま・あいまいで区別がつかない状態を表す四字熟語です。
たとえば、
- 問題の原因を追及せず、なんとなく終わらせてしまう
- 白黒つけずに流してしまう
そんなときに「有耶無耶になった」「うやむやにする」と使われます。
ヒロト「有耶無耶」ってどんなことを意味するの?もう少し詳しく教えて!
コトハ“有耶無耶”はね、物事をはっきりさせずにあいまいなままにすることを意味するの。結論を出さずに終わったり、責任をあいまいにしたりする時によく使う言葉よ。
「有耶無耶」の語源や由来
「有耶無耶」という言葉の語源には、いくつかの説があります。
どの説も「あるのか、ないのか、はっきりしない」という共通の意味を持っていますが、
ここでは代表的な2つの説をご紹介します。
①「有りや無しや」の疑問形から生まれた説
もっともよく知られている説は、
「有(あり)」と「無(なし)」に疑問の助詞「耶(や)」を加えた
「有りや、無しや」という言葉から生まれたというものです。
つまり、「あるのか、ないのか、はっきりしない」
という状態を表す言葉が、そのまま「有耶無耶」となったのです。
この説は、語の構造がわかりやすく、辞書などでもよく採用されています。
「有耶無耶にする=あるのかないのか曖昧にして済ませる」という現代の意味も、
ここから自然に派生したものと考えられます。
②「有耶無耶の関」にまつわる伝説から生まれた説
もうひとつ興味深いのが、地名説・伝承説です。
古くから、宮城県と山形県の県境にある笹谷峠(ささやとうげ)には、
「有耶無耶の関(うやむやのせき)」という関所があったと伝えられています。
その昔、この峠には人を喰う鬼が棲みついていて、旅人を襲っていたといいます。
ところが、鬼が現れると「うや(有耶)」、いないときは「むや(無耶)」と鳴く
2羽の霊鳥がいて、旅人に危険を知らせたという伝説が残っています。
この「有耶」「無耶」という言葉が「ある・ない」を意味し、
それが「有耶無耶」と結びついたのではないか──
そんな語源説が語り継がれてきました。
また、秋田県と山形県の県境にも同名の「有耶無耶の関」が存在したという説もあり、
そこでは「手長足長」という鬼を退治するために、
神の使いの鳥が「うや」「むや」と鳴いて旅人を助けたと伝えられています。
どちらの地域でも、「鬼がいる(有)」「鬼がいない(無)」を知らせる鳥の声が
「有耶無耶」という言葉と重なっていったとされています。
③伝承と語源の関係
これらの伝説はたいへん魅力的ですが、
「有耶無耶」という言葉が実際に関所の地名から生まれたという
確かな史料はありません。
とはいえ、
「あるかないか定かでない」「曖昧なまま」という意味を象徴する物語として、
こうした伝承は言葉のイメージを豊かにしてくれます。
「有耶無耶」の使い方を例文でわかりやすく解説
それでは、「有耶無耶」の正しい使い方を具体的にイメージできるようわかりやすい例文をご紹介します。
ヒロト「有耶無耶」ってどういう場面で使ったりするの?
コトハたとえば、話し合いの結論を出さずに終わったり、責任をあいまいにしたりするときに使うの。つまり“はっきりさせないままにする”場面ね。

「有耶無耶」は以下のような場面で使われます。
- 話し合い・会議の結論が出ないとき
会議で意見がまとまらず、そのまま終わってしまうような場面。「結論が有耶無耶になった」など。 - 問題や責任をあいまいにして終わらせるとき
トラブルや不祥事などで、原因や責任を追及せずに済ませる場面。「責任を有耶無耶にする」と使う。 - 約束や話題をあいまいにしてごまかすとき
約束を守らず、はっきりした説明もしないとき。「話を有耶無耶にする」と表現する。 - 曖昧な態度や返答をするとき
明確な返事を避けて、あいまいな返答をするような場合。「態度を有耶無耶にする」など。 - 出来事や結果がはっきりしないとき
「どうなったのかよくわからない」「うやむやのまま終わった」と言いたい場面に使われる。
「有耶無耶」を使う時は以下の点に注意しましょう。
- 基本的に否定的なニュアンスを持つ
「はっきりしない」「ごまかす」など、良い意味では使われません。ビジネス文書では特に注意が必要。 - 原因・責任・結論など「明確さ」が求められる文脈で使う
単なるあいまいさではなく、「本来明確にすべきことをあいまいにしている」状況に使うのが自然です。 - 日常会話では「うやむやにする」と動詞形で使うのが一般的
四字熟語として文語的に使うより、「話をうやむやにする」「うやむやのままにする」と言い換えると自然です。
「有耶無耶」の例文①
話し合いの結論が出ずに終わったとき。
ヒロト昨日のクラス会議、結局どうなったんだっけ?
コトハうーん、意見がまとまらなくて、結論は有耶無耶のままだったのよ。
ヒカル“有耶無耶のまま”は、はっきりしないまま終わった、という意味ですね。話し合いなどで決着がつかないときに使う表現です。
解説:この使い方は、「話し合い・議論・問題」があいまいなまま終わってしまったときにピッタリです。
「結論が出ない」「誰も責任を取らない」などの状況をやや否定的に表すときに使われます。
「有耶無耶」の例文②
責任をあいまいにして済ませるとき。
ヒロト昨日のトラブル、誰のミスだったの?
コトハうーん…上司が“みんなの責任”って言ってて、結局有耶無耶になっちゃったのよ。
ヒカル“有耶無耶になった”は、原因や責任をあいまいにして終わったという意味です。問題解決を避ける場面でよく使われます。
解説:この表現は、責任を追及しないまま終わらせるというネガティブな印象を持ちます。
ビジネスの場でも、「責任を有耶無耶にする」「問題が有耶無耶になった」という言い方が多く見られます。
「有耶無耶」の例文③
約束や話題をごまかす場面とき。
ヒロトコトハ、あの課題の提出日って今日だったよね?
コトハあっ、えっと…その話は有耶無耶にしておいてくれる?
ヒカル“話を有耶無耶にする”は、はっきり答えずにごまかす、という意味です。あいまいにして場をやり過ごすときに使います。
解説:このように「話を有耶無耶にする」は、答えをあいまいにして逃げる・ごまかすときに使われます。
やわらかい言い方なので、日常会話でもユーモラスに使える表現です。
「有耶無耶」の言い換え表現を例文を使ってわかりやすく解説
「有耶無耶」は、“はっきりさせない・あいまいにする”という意味を持つ言葉ですが、日常会話ではもう少し柔らかい、または具体的な言い方で表現されることもあります。
ここでは、使いやすい2つの言い換えを見てみましょう。
【有耶無耶の言い換え表現】
言い換え①:曖昧(あいまい)にする
言い換え②:ごまかす
「曖昧にする」の例文
曖昧(あいまい)は、「はっきりしない」「どちらとも取れる」という意味の一般的な言葉です。
「有耶無耶にする」を言い換えるときに最も使いやすい表現です。
ヒロト昨日の話、どうなったの?
コトハ結局、曖昧にして終わっちゃったみたいよ。
ヒカル“曖昧にする”は、“有耶無耶にする”とほぼ同じ意味です。口語的で自然な言い方ですね。
解説:「曖昧にする」は、「有耶無耶にする」よりも柔らかく、日常会話やビジネスでも幅広く使えます。
ただし、意味としてはやや中立的で、必ずしも否定的ではありません。
「ごまかす」の例文
ごまかす」は、意図的にあいまいにしたり、真実を隠したりする意味を含みます。
「有耶無耶」に比べて少し強い語感を持つ言葉です。
ヒロトあの人、質問されてもいつも話をごまかすよね。
コトハそうね。まさに“有耶無耶にする”タイプの人だわ。
ヒカル“ごまかす”は、はっきりさせないで逃げる、という強めのニュアンスです。皮肉っぽく使うと効果的です。
解説:「ごまかす」は「有耶無耶」の中でも特に意図的な曖昧さを表します。
「責任をごまかす」「話をごまかす」など、少し批判的な文脈で使われます。
言い換え表現の違い
| 言い換え表現 | 意味の近さ | ニュアンス | 使用場面 |
|---|---|---|---|
| 曖昧にする | ◎(非常に近い) | やわらかく中立的 | 会話・文章どちらにも使いやすい |
| ごまかす | ○(少し強め) | 否定的・皮肉を込める | 批判・注意・皮肉の表現に使う |
「有耶無耶」の類義語
「有耶無耶」と同じく“はっきりしない”“あいまい”な意味をもつ四字熟語に、「曖昧模糊 」と 「五里霧中」があります。
それぞれの意味と使い方を見てみましょう。
「曖昧模糊」の例文
「曖昧模糊」とは、物事の様子や考えがはっきりせず、ぼんやりとしていることを意味します。
“曖昧”も“模糊”もどちらも「はっきりしない」という意味を持ち、
合わせて「非常にあいまいで、つかみどころのない状態」を表す言葉です。
ヒロトあの先生の説明、結局何を言いたいのか曖昧模糊としていたよ。
コトハほんとね、聞いてもはっきりしなかったもの。
ヒカル“曖昧模糊”は、内容や状況がぼんやりしていて、はっきりしない状態を表します。
解説:「曖昧模糊」は「有耶無耶」と似ていますが、
“わざとごまかす”というより“自然に不明確な状態”を指します。
文学的・抽象的な文章にもよく使われる表現です。
「五里霧中」の例文
「五里霧中」とは、物事の見通しが立たず、どうしていいのかわからない状態を表します。
もともと「五里先まで霧に包まれて何も見えない」という故事成語に由来し、
そこから転じて「迷いや混乱の中にいる」という意味になりました。
ヒロト就職活動を始めたけど、何から手をつければいいのか五里霧中なんだ。
コトハ最初はみんなそうなのよ。少しずつ方向を見つけていけばいいの。
ヒカル“五里霧中”は、霧の中にいるように、先が見えず迷っている状態を表す言葉です。
解説:「有耶無耶」は“意図的にあいまいにする”ことを指しますが、「五里霧中」は“自分が混乱してわからない”という状態を表します。
同じ「あいまい」でも、主語が“人”か“状況”かで使い分けると自然です。
「有耶無耶」の対義語
「有耶無耶」の反対の意味をもつ四字熟語には、「一目瞭然」 と 「明明白白」 があります。
どちらも“明確・はっきりしている”ことを表します。
「一目瞭然」の例文
「一目瞭然」とは、見た瞬間にすぐわかるほど明らかなことを意味します。
“一目(ひとめ)”で“瞭然(りょうぜん=はっきりしている)”という言葉の通り、
外見や結果などが即座に理解できる状況で使われます。
ヒロトコトハ、今日の結果は一目瞭然だね。ヒカルが一番頑張った!
コトハほんとね、努力の成果がはっきり表れてたわ。
ヒカル“一目瞭然”は、見た瞬間にすぐわかるほど明らかなことを意味します。
解説:「一目瞭然」は“誰が見ても明確に理解できる”ことを表す言葉。
「有耶無耶」のような曖昧さとは正反対の意味です。
「明明白白」の例文
「明明白白」とは、明らかで疑う余地のないことを意味します。
“明”も“白”も「はっきりしている」という意味を持ち、それを重ねることで「非常に明確である」ことを強調しています。
ヒロト彼の冗談が嘘だったのは、表情を見れば明明白白だったよ。
コトハあはは、バレバレだったものね。
ヒカル“明明白白”は、事実や真実が完全に明らかで、少しの疑いもない状態を表します。
解説:「明明白白」は“証拠や理屈ではっきりしている”というニュアンスが強く、
「一目瞭然」が“見てすぐわかる”のに対して、“明白さの度合いがより強い”言葉です。
| 熟語 | 読み方 | 意味 | 有耶無耶との関係 |
|---|
| 一目瞭然 | いちもくりょうぜん | 見た瞬間に明らかにわかる | 見て理解できる=あいまいさがない |
| 明明白白 | めいめいはくはく | 疑いがなく明確である | 理屈や事実面でも完全に明らか |
「有耶無耶」の英語表現
「有耶無耶」を英語で表すときは、状況に応じて2つの表現がよく使われます。
【有耶無耶の英語】
・sweep something under the rug:「問題を見て見ぬふりをする・ごまかす」
・vague:「あいまいな・はっきりしない」
「sweep something under the rug」の例文
"sweep something under the rug"は、直訳すると「じゅうたんの下に掃き入れる」。つまり、「問題を隠してなかったことにする」「うやむやにする」という意味です。
ビジネスや政治などの場面でもよく使われる表現です。
ヒロト「有耶無耶」を英語で表現した例文を教えて!
コトハ"They just swept the mistake under the rug and moved on."のように表現することができます。
日本語訳:彼らはそのミスをうやむやにして、何事もなかったかのように進めた。
ヒカル“sweep under the rug”は、問題を隠したり、あいまいにして済ませるときに使う言い回しです。
解説:この表現は、「責任を追及せずにごまかす」「見なかったことにする」という、
まさに“有耶無耶にする”の英語版。ニュース記事や映画のセリフなどでもよく登場します。
「vague」の例文
“vague”は「ぼんやりした」「不明確な」という形容詞。
“有耶無耶”が“あいまいなまま”という意味で使われるときにぴったりです。
ヒロト「有耶無耶」を英語で表現した例文をもう1つ教えて!
コトハ"Her answer was so vague that I didn’t know what she meant."のように表現することができます。
日本語訳:彼女の返事はあいまいで、何を言いたいのか分からなかった。
ヒカル“vague”は、内容や態度がはっきりしないときに使う単語です。性格や説明にも使えます。
解説:“vague”は、“有耶無耶のまま終わる”“態度があいまい”など、人の言葉や説明をやわらかく表現するときに便利です。
まとめ:「有耶無耶」は“あいまいにしてごまかす”ときの言葉
「有耶無耶」とは、物事をはっきりさせずに、あいまいなまま終わらせることを意味する四字熟語です。
話し合いの結論を出さないままにしたり、責任を追及せずに済ませたり――
そんなときに「問題を有耶無耶にした」「結論が有耶無耶のままだった」と使います。
この言葉には、“明確にすべきことを避ける”というやや否定的なニュアンスがあります。
そのため、ビジネスシーンや報告書などでは「曖昧にする」「未解決のまま」などの表現に言い換えるとよいでしょう。
一方で、「有耶無耶」は文学的な響きも持っており、
人間関係や感情の“ぼんやりとした曖昧さ”を描写するときにも使えます。
場面によって、ごまかしの曖昧さにも、情感の曖昧さにもなりうる、
奥深い言葉といえるでしょう。
「有耶無耶」まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 意味 | 物事をあいまいにして、はっきりさせないこと |
| 類義語 | 曖昧模糊・五里霧中 |
| 対義語 | 一目瞭然・明明白白 |
| 英語表現 | sweep something under the rug/vague |
| ニュアンス | 否定的な「ごまかし」や「結論を避ける」印象がある |


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